愛すべきベトナム???
何故ベトナムに来たの?と開口一番に聞かれる。
初対面で聞かれる質問No.1である。
元々ベトナムがお好きで?とかも聞かれるが、全くそんなことはない。
大学時代は別の資格を目指していた私にまず東南アジアは眼中になかった。
大学時代の友人たちにベトナム行きを伝えた時はベトナムもベの字も今まで聞いたことなかったのに急にどうした、
洗脳されたんじゃないかと心配された。
生来の神経質さと鬱屈した思考を持ちながらも今日までベトナムで生活できたのはある意味奇跡かもしれない。
東南アジアってどこだよ?とgoogle mapをググるところが私のベトナムへのファーストコネクションだった。
そして、実際にベトナムに行ってみた時の印象は絶対に住めないと思ったが、
その後に行ったタイやインドネシアと比較してベトナムを選んだ。
理由は、
- 食べ物。3国の中でローカルフードが一番おいしかった。
- 物価が安い。
- それなりに発展している所とどローカルな部分が丁度よく混在している。
- 自分の妥協点がベトナムだったら我慢できそうだったから
ベトナム料理なんてそれまで食べたことなかったし、東南アジアっぽい文化も全然興味なかった。
ただ日本に居られないという理由だけで東南アジアに飛び出したのだ。
飛び出したはいいものの、周りのみんなは私がベトナムで生活できるのか疑心暗鬼だった。
みんなは私の神経質さも知っていたので、むしろ心配された。
1ヵ月程度で逃げ帰りたくなかった。
ベトナムに行くんだーとあいつは大口叩いたのにすぐ帰ってきたと思われたくなかった。
だから1年は何が何でもベトナムにいるぞと目標を立てた。
ベトナム在住の日本人たちに最初に挨拶すると皆まだ来たばかりなんですね~とは言ってくれたものの、
すぐいなくなっちゃう人も居るからね~とも言われた。
結構な確率で帰国してしまうらしい。
ここで考えたのは自分にとってどこまでが妥協できて、どこまでができないのかという点だった。
私が一番妥協できないのは食事だった。
現地採用となると出向に比べて格段に給与は下がる。
ましてや私は経験が浅かったのでなおさらだった。
だから、割高になる日本食は毎日のようには食べられない。
となると、安いローカル食を食べられるか否かが焦点となった。
インドネシアのローカル食は辛い、甘いの両極端で全然食べられなかった。
タイは辛い。インドネシアよりは食べられたが、おいしいとは思わなかった。
ベトナムはおいしい。さらに様々な国の料理が安く食べられる。
料理のバリエーションが一番豊富だと感じた。
次に移動手段だ。
インドネシアは車社会過ぎてどこに行くのも車がなければ移動できないのがストレスだった。
タイは鉄道があるが、駅の間は歩かなくてはならない。
そして、タイの車はスピードが速い上に運転が非常に乱暴だった。
タイでツアーに参加している時、急ブレーキに急加速のオンパレードで非常に怖い思いをした。
ベトナムでは市内は出せても時速40キロ程度、バイクがうろうろたくさん走っているのでスピードが出せない。
止まれるスピードで走るのが常なので、バイクの事故は確かに多いが自動車事故というのは全然聞かない。
鉄道はまだないが、現在地から目的地まで気軽に行かれるバイクやタクシーは魅力的だった。
ベトナム人については全然考慮に入れていなかった。
何とかなるだろうと考えていた。
聞いていた話はプライドが高い事、親族間のつながりが強く家族を大事にするということだった。
入社当初、ベトナム人たちは私を警戒していたが、一緒に頑張りましょうという気概を見せると敵ではないと判断したのか、
友好的なムードになった気がする。
ここで、ベトナム人をいきなり指図したり、日本人であることを全面的に押し出してえらぶってはいけない。
いくら思い通りに行かなくて、考えが足らずに何度も失敗されたり、用件を忘れられたとしても感情的にムキーっとなればなんだこいつという態度を取られかねない。
舐められてもいけないし、接し方が難しい。
いくらちょっとそれはないんじゃないっていうようなことが起きても、馬鹿にしたり皆の前で叱りつけたりするのはNGだ。
プライドを傷つけられるのをベトナム人は一番嫌がる。
でも、プライドだけ高くなりすぎている人もいるんだなとは感じるが。
「すみません」と素直に謝れるベトナム人は少ない。
報連相はできないし、気遣いとか創意工夫とかそういう類は期待できない。
モラルやマナーについての認識も甘い。
街中でイライラすることは数えきれないほどあるし、ベトナムの全てがサイコーとは言い難い。
それでも日本より優れたところはあるし、たまにある感激的な出来事のおかげで今日までやってこれた。
また、親日感情が強く日本人だからという理由で友好モードになったり事が優遇されることが多々あった。
日本人ということだけで信用性が高くなる。
日本は高品質のイメージがあるらしく、期待値も高い。
彼らの日本に対するイメージは先代が築き上げてきた歴史の賜物である。
ここはベトナムだ。日本に生まれ、教育を受けてきた日本人は高品質であるという評価なのだ。
日本に居れば当たり前の価値観と教育がここでは貴重として評価されるのだ。
ある種の下駄を履かせてもらえる。
これに胡坐をかいてはいけない。
日本人であるというだけで敬ってくれることを勘違いして、横暴な態度を取るべきではないのだ。
東南アジアの中で日本が特別評価されやすいが、これは東南アジア内の話であって、
欧米諸国にいけばアジア人という括りで差別されることもあり得るのだ。
非常に親切に接してくれるベトナム人もいるし、日本人以上に賢いベトナム人もいる。
日本人がベトナム人を馬鹿にし見下したような発言をしている時があり、あまり良い気分ではない。
利害が絡む時のベトナム人は恐ろしいと思うが(責任転嫁や言い訳、もしくは自分の評価を過剰に訴える等)
街中でバイクがぶつかったり、困った顔をしていると助けてくれる人がいる。
人間性としてはよくも悪くも自尊心が高い人が多いと思う。
日本人と違う所はプライドが高く、自分の非をなかなか認めないところだ。
だからといって他人に意地悪をする人はごく一部だ。
ただ、マナーや礼儀等のグローバルスタンダードな教育を受けていないため、
粗暴に見える時がある。
また、窃盗や賄賂等金目の犯罪も多い。それが悪い事であるという意識が希薄なのも問題だが…
さらに自主性や創造性が足りないと感じることが多々あるがそれも受けてきた教育が日本と違うという当たり前のことだ。
ベトナムでは図画工作は既に「決まったお手本」が提示されており、いかにこの通りに上手く完成できるかが評価されるというのだ。
日本のような各自の創造性を育む機会が圧倒的に少ない。
社会主義としてこのような教育は仕方ないのかもしれないが、言われたことだけやる人間を生み出すような教育では
今後のベトナムの発展が滞ってしまうのではないだろうか。
それが今でも発展途上国と言われる所以かなと思う。
そして、日本では「当たり前にできること」はこの国では当たり前ではない。
日本の要求水準はベトナム人からしてみると高すぎるのだ。
日本人のように全て隅々まで完璧に物事を完遂するという概念はない。
価値観や文化、教育と言った全く土壌が違う人間に違いを理解せずに日本通りのやり方を押し通すのは不可能だ。
ここはベトナムである、という事を何度も言い聞かせないと日本人が追いつめられる。
そして、彼らは時にずる賢く感じる。
とにかく面倒事は避けようとするし、損得勘定にシビアな面がある。
家族が一番大切なので、家族に何かあれば躊躇なく休む。
日本人がマネージメントしようとするとぐぬぬ…と感じることがたくさんある。
そういう時に日本人はなんて従順で、我慢強い国民性だったのだろうかと思うのだ。
今後は少子化で日本人もどんどん減り、人件費は高くなる。
外国人労働者を安い賃金で雇い、回していく職場も増加するだろう。
日本人が世界的に見て、几帳面で真面目すぎるので、
他の外国人が乱雑で怠け者に感じる人が大半だと思う。
日本的文化にどっぷり浸かってきた日本人労働者たちが外国人と働くことが当たり前になったら、
どのように順応していくのか興味がある。
話が反れてしまったが、東南アジアの全てがサイコーと思って来越すると現状とのギャップが激しすぎる。
ベトナム人に対しては皆口に出さないものの不愉快に思ったり、思考回路が理解出来なかったりと大半の在越日本人は感じているんじゃないかと思う。
友好的で真面目な人材と称されるベトナム人とこの国の文化について、
実際に働いて接してみるとまた違った側面も見られる。
だから、ネット上の情報だけでベトナムサイコーと安易に思われるのはいかがなものかと思った次第である。